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ビジネスモデル特許
第四回
業種別コンサルテーション 〜サービス業編その一〜
桑山 義明(株式会社シーガル 代表取締役)
今回は業種別コンサルティングの実例としてサービス業の例をご紹介します。群馬県高崎にある株式会社 U のS社長にお会いしました。
MBA のオンラインコンサルティングの結果を拝見すると顧客/商品ポジショニングは、第II象限の特定顧客に特定の商品を提供する会社で、情報化進捗度は 3 段階目のネットワーク化が完了している状態の企業です。
売上規模 5〜10 億、従業員規模 10〜49 人で拠点は本社のほかに群馬県下に 16 校の学習塾を経営している会社です。中学生が主体の塾ですが、最近では小学生にも重点を置いた塾経営を心がけている S 社長です。
ポジショニング:
取扱商品・サービスは、規格品が多少多く、顧客は、固定客と不特定客の割合がほぼ半分ながらわずかに固定客が多い結果となりました。
情報化進捗度:
販売仕入管理や財務会計システムなどのアプリケーションがネットワーク上で稼働している状態でした。
伸びている会社社長は、勉強熱心
まず、高崎の本社にお邪魔して顔を見てびっくりしました。というのも、筆者が講師で『経営者のためのパソコン実践教室』をある雑誌社主催で昨年3日間おこなったのですが、S社長はそのときの生徒さんだったのです。
多くの会社を訪問して思うことは、伸びている企業の経営者は総じて勉強熱心で、本をたくさん読まれている、ということです。ビジネス新刊本を暇さえあれば読んでいる経営者の方もたくさんいらっしゃいます。絶えず最新のトレンドやビジネス手法あるいはIT情報などを勉している経営者の方をたくさん知っています。特に中小企業トップは自ら経営を実践しながら迅速な意思決定をしていく必要があるため、自らの感覚をいつも磨いている必要があるからです。
さて、今回ご希望のコンサルティングの主旨は、コミュニケーションの充実化です。従来各校の責任者は毎朝本社に集合して社長とのミーティングの後各校に出社していたのを、今年の4月から本社に毎日集まらず直接各地の塾に出社して業務を行うという方針に変更しました。これには、業務の効率化を図るとともに、各校の役割を従来の「出張所」的なものから「支店」という機能を持たせて管理するという意図がありました。その結果として、それぞれの分校がそれぞれの裁量で機能し始めた反面、社長と各地の責任者とのコミュニケーションがうまく取れなくなってきました。そこで、ITを利用してコミュニケーションの質の向上を図りたいとのご要望が出てきたのです。
社内コミュニケーションの重要性
I社長の熱気や意図をどう管理職や社員全員に伝えていくかという問題は、社員の数が増えて来たり支店や営業所が開設され社長の顔を直接見られなくなってくると重要になってきます。
お客様の顔を見ず社長の顔色ばかり伺っている会社は別としても、トップの考え方や意図がひとりひとりの管理職や社員にまで浸透していかないと中小の会社経営はつまずきます。大手企業の場合は、組織で動いている場合が多いのですが、多くの中小企業は経営トップのキャラクターや人柄が大きく影響してきます。
このことは、お客様に対してもそうですし、社員に対しても大きく影響するのです。S社長は言います。『毎日社長の顔を社員が見ていないと、不安なようですね。』リフォームのフランチャイズ大手A社のH社長は、毎朝全国ブロック長に対してテレビ会議システムで激をとばします。その後ブロック長は、同様に傘下の営業所長にテレビ会議システムを利用して昨日の実績と本日の目標あるいは社長の考え方を伝えていきます。朝8時半の社長訓話が、当日午前10時までには全国の営業員に伝達されるのです。
ITでどこまでコミュニケーションは向上するか
人間には五官を通じて伝達される感覚に五感があります。視覚、聴覚、嗅覚、触覚そして味覚の五つです。時間も場所も同じ所で会って話をする場合は、この五感をフルに使ってコミュニケーションすることができます。社長の息遣いや顔の色艶、あるいは握手をして伝わる触感覚などは大変アナログ的感覚でコミュニケーションをとることができます。
しかし、ITを利用した電子メールや電子掲示板になるとこの五感のうち視覚のみにたよったコミュニケーションにならざるを得ないのです。もちろん聴覚にたよる電話という手段もあるでしょう。文字やグラフあるいは図解、写真でなかなか伝わらないニュアンスは従来通り会ってコミュニケーションする必要はあるでしょう。
しかし、ITを利用した視覚あるいは聴覚(音付ビデオレターなど)にたよった手段には、会って話したり電話で話すことに比べて大きな利点があるのです。
それは、お互いの時間や場所を制約しないことと同時に『記憶性』ともいえる『記録性』です。
電話や会うことの大きな制約は、同じ時間を共有しなければならないことです。スピードを要求される経営の中で、トップは社員とのコミュニケーションに時間をさくことより、市場やお客様にむかって時間をさかないと生き残っていけないことを知っています。また、『言った、いわない』や『聞いた、聞いていない』などのコミュニケーションレベルの低い会話が飛び交っているようでは、同様のことがお客様との間でも起こっている可能性があるのです。このレベルを上げてくれるのが ITを利用した電子メールやグループウェアなどのツールです。1年でも2年前での出来事も『記憶』してくれると同時に、瞬時に経緯を『検索』してくれるのです。従って、ITを利用したコミュニケーションは、会って話すほどの感動や効果はないのかも知れませんが、『言った、言わない』などのコミュニケーションレベルや質を改善、向上してくれる武器となるのです。
通信回線をどう設計するかがポイント
高崎市内や群馬県下に点在している各校とネットワークを構築して、電子メールやグループウェアあるい電子会議室を共同して利用するしかけを提案すると同時に、教材ファイルを本社サーバーに共有することにより講師の先生それぞれのパソコンや引出しに入っていた資産を一元管理することが可能となります。
問題は、ネットワーク回線とサーバー配置をどうするかです。
ISDN回線からインターネット経由で本社サーバーに接続。
ISDN回線から直接本社サーバーにリモートアクセスして接続。
CATVのインターネット専用サービスを実施しているエリアの塾は、その回線を利用してインターネット経由で接続。
大きくブロック分けして本社とブロック間は、128KBの専用線にして、そのブロックサーバーと傘下の塾はISDNでリモート接続。
などなど色々なケースが考えられます。
これらの中でインターネット回線を利用するか、電話回線や専用線を利用して直接接続するかでセキュリティやスピードとのトレードオフになります。現実にどのくらいの頻度でファイル更新やメール交信あるいは電話やFAXのやりとりをしているかにより、本社と各校はすべて専用線接続にして、電話やFAXも内線状態で交信して、さらに電子データも同じ回線を使うVoIP(ボイスオーバー)方式も考えられます。
この提案のどれが正解かは、CATV回線や共有データのサイズあるいは更新頻度により決まってきます。このような場合、全体を安価な方式から実験してパフォーマンスに応じてバージョンアップしていくケースと2-3個所実験的に運用して、実験値を検証してから全体構築していくなどの方法が考えられます。
また、今後全校がインターネットに関してどのように関わっていくかにより、インターネット中心のシステム構築をIT戦略の主眼とするかの結論もトップとしては出す必要もあります。
ビジネスモデル構築の重要性
もうひとつの問題は、今後の塾のビジネスモデルをどのように構築していくかです。
少子化の問題や文部省の受験地獄解消を目的とする受験科目やカリキュラムの見直しにより、現在の塾経営はこれから厳しい方向を余儀なくされていきます。従来までは、高校受験あるいは中学受験を目指して親も子供も塾にきている。いわゆる塾にくる目的と価値観がはっきりしていました。しかし、これからは学校教育も『生きる力』を育てるために受験向けカリキュラムから大きく変貌していくときに『塾』の役割も変わっていかざるを得ません。そのような教育環境になってきたときに、『学習塾』の新しいビジネスモデルが問われてきます。
正解はありません。これからS社長が『脳に汗をかいて』考え、実行していくこととなります。
オンラインコンサルティング実施後、実際にお客様のところに訪問して一緒にビジネスモデルや情報システムを考え、支援していく人材のビジネスプロデューサ(BP)研修会が、10月初旬一週間泊りがけで開催されました。全国16名のBP一期生が誕生しました。この研修会で、学習塾の新しいビジネスモデル提案をS社長にもご出席いただき、喧喧諤諤ディスカッションし、グループ別に三種類提出いたしました。どのモデルもこれからの方向とITをうまく組み合わせたモデル提案としてS社長には高い評価をいただきました。S 社長がどのモデルを採用して、21世紀にむかっていくか1〜2年で成果がでると確信しています。
今回は、学習塾というサービス業という業種でのコンサルティング実例をご紹介いたしました。次回(最終回)は、サービス業の別ケースのコンサルティングをご紹介いたします。
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最終更新日:2003年11月19日 11:32:44